濁川温泉 新栄館
2013.01.12~2013.01.14 連泊
=====================================
以前、日帰り入浴した記事はこちら
http://onsen.weblog.to/archives/1839107.html
=====================================
1月12日~1月14日まで2泊3日で連泊してきました。
以前、日帰り入浴した際に、ここの温泉の濃さに感動したのを思い出し、
今回は連泊でじっくりとここの温泉を味わおうということになりました。
3連休という繁忙期であり、冬の温泉シーズンのため予約が取れるかどうか心配しながら新栄館にTEL.....
おじいさん : 「あーい。もしもーーし」
けーじ : 「新栄館さんですか~?」
おじいさん : 「あーい、そうですーー」
けーじ : 「1月12日・13日の2連泊、2人1部屋なんですが空いてますか~?」
おじいさん : 「あーい、大丈夫ですーー」
けーじ : 「じゃあ予約お願いします」
おじいさん : 「名前と連絡先はー?」
名前・電話番号を告げる・・・。
おじいさん、奥の方に予約のことを伝える・・・。「予約、いいよな?」という声が・・・。
おいおい・・・もう予約大丈夫って言ってから、大丈夫かどうかそちらで相談かよ・・・。面白い爺さんだ・・・。
とかなんとか思いつつ、そして、かなりご年配なようなのでちゃんと予約できているかも心配しつつ濁川温泉郷へ向かった。
(途中、盤石温泉や桜野温泉熊嶺荘に寄り道しながら~)
到着して、新館の方に入ったところで御爺さん(宿主)と対面。
晩御飯の時間を決めてから部屋の鍵をもらい、2階の部屋へ。
建物は古いがきれいに清掃されている。
古いと言ってもこちらは新館・・・。
暖房・テレビもある。
携帯電話の電波も上々。
さて、早速お風呂へ。
新館には女湯。旧館には男湯がある。
旧館の男湯は混浴してもいいことになっている。
旧館の廊下を通り、
左右に傾きまくった階段を下りる。
この廊下、この階段がまた趣があって好きなところです。
なんとなく獣臭がするところは苦手だが・・・。まぁ、たいした気にならないので良しとしましょう。
脱衣場は衝立だけで仕切られた男女一緒の部屋。
後々、爺さん(宿主さんと呼ばず、どうしても良い意味で愛着があって爺さんと呼んでしまう・・・。)から聞いたのだが、混浴はいいが、脱衣場は男女完全に分けないとダメだって保健所が言いに来ているらしい。
「保健所がそんな決まり作る前からここやってるのに、どうしたらいいんだ!?」
と、爺さんが言い返すらしいが・・・。
爺さん、がんばれー!このままの新栄館が大好きだぞー!
と、応援したくなる。
久しぶりの新栄館。
相変わらずの名湯だ。
若干の油臭がこれまた良い。
濁川温泉で唯一の透明湯。
お湯は右奥の壁の穴から注がれて3つの湯船に分岐されている。
お湯の入る量によって温度調整ができるのと、
3つのうち2つの湯船には蛇口がついていて水を入れることができる。
この水も、もちろん水道水ではなく冷鉱泉。飲むとエグイ味がする。
お湯の方は若干塩味のある鉄分豊富な味わい。
昔の温泉分析表があるが、見てもよくわからない・・・。
危なっかしい天井も去年のまま・・・。
これでいいんです。これがいいんです。そのままがいいんです。
夕刻に着いたので、お風呂から出たらすぐご飯の時間になりました。
食事は新館1階の広間で。
他のお客さん、いっぱい来てるのかな~?と思いつつ襖を開けましたが・・・。
1組だけでした。
寂しいけど、ちょっと嬉しい・・・。
1泊6,500円という安値なので、食事の内容は期待していませんでしたが
おっ、なかなか良さそうです!
鍋・刺身・かき揚げ・オクラの胡麻和えなどなど多数。
この他にも出ました。
穴子と海苔の蕎麦とかも。覚えてないけど他にも出ました。
ビール等は注文することもできるが、持ち込みのお酒とかあるなら持ってきてここで飲んでもいいとのこと。うれしいことです。
食前酒は山葡萄の果実酒。
これ、旨いです。
爺さんが食事を運んできてくれている時に、
「山葡萄酒旨いですねー!」
というと、なんと13年物らしい。
他、出してはいけないだろうと思われるおいしい内緒のものもいただき、
またその時に爺さんと楽しい雑談が・・・。
爺さん、立ったまま話してるから、
「一緒に飲みながら話せば~?」と誘ってみた。
その結果・・・・・・・。
持ち込んだ日本酒、爺さんにおすそ分けして乾杯!
優しさと、とても良い人柄が笑顔に表現されていますね。本当に良い人です。
飲みながらたくさん話をしてくれました。
年は81歳と数ヶ月だということ。
昭和20年6月に海兵隊に応募して、綱1本で上まで登る試験ではこの管内1位で合格したということ。
12月から入隊予定だったのが8月で終戦してしまったこと。
爺さん : 「おい・・・終戦って、海兵隊入れないって・・・どうすりゃいいんだよ。。。」
と、自虐ネタ的な話まであって大笑いになったり。
函館の旅館で修行してきた息子が料理担当していること。
などなど。
爺さんは料理のことは一切わからないらしく、かき揚げは何をつけて食べるのか聞いたところ、
「知らん。そのままか?醤油か?知らん。」とのこと。
知らなくていいんです。その笑顔を見るだけでこちらも笑顔になるんです。本当に。
楽しく会話が弾み、1時間程度したところで、
爺さん、日本酒を飲みきる前に自分の席に缶ビール(発泡酒)を持ってきて飲もうとしていた。
そこで、爺さんの好きなお酒は何か聞いてみた。
爺さん : 「エビス飲むと、あいつを思い出すんだよなぁ~・・・」
と、あいつって誰のことか忘れましたが、とりあえずエビスが好きらしい。
ちょうど1本、エビスがあったので温泉女が部屋まで走り、持ってきた。
その結果・・・。
イェ~イ!!
爺さん、ご機嫌です。
本当に嫌みのない微笑ましい笑顔。
エビスで機嫌が取れたからか、爺さんのサービス精神なのかは不明ですが、
次はまた違うお酒が出てきました。
とにかく飲めと。一気に飲めと。匂いなんて嗅ぐなと言う。
一気に飲んで、他の酒で味を流せという。
怪しい・・・爺さん、怪しいぞ~~?
きっと、あの酒だな・・・・・。
とりあえず言われた通に一気飲みする。
温泉女はあまりのキツさに山葡萄酒で口直しをする。
飲んだ我々を見て爺さん、またニッコリ。
マムシ酒だよー と。
やっぱり・・・。ちょっと辛い感じでしたが全く問題なし。おいしくいただきました~。
「これ飲むと、あれがこうなるんですよねぇ~?」と、下の方に手を持っていき、腕を上向きにすると
爺さんは口を全開にして大笑い。
自分たちもそれにつられて大笑い・・・。楽しいひと時でした。
さらに会話は弾み、1時間半を過ぎ去った頃、爺さんは女将さんに呼ばれてしまって残念ながら宴会は終了になってしまいました・・・。
他に泊まりのお客さんいないから、新館の女湯も自由に一緒に入っていいんだよーと言ってくれたので、
夜はそちらで混浴をしました。
(温泉の画像は前回記事参照)
新館がある場所は、以前は「仙人の湯」という露天風呂があったそうで、旧館とは別源泉が引かれている。
こちらは鉄っぽい湯の華がたくさんお湯の中に舞っているお湯。
盤石温泉と似たような色合いに見えるが、それとも違う感触です。
旧館の男湯の方が風情があって好きですが、女湯の方も素晴らしい湯質だと思います。
旅の疲れもあってかその日は早めに寝付いてしまい、そのまま朝を迎えました。
朝風呂もいいですなぁ~。
新栄館のお湯、最高です。
あまりにも濃くて長湯しすぎちゃヤバいのではないかと思うくらいのお湯。
道内有数の名湯じゃないかと思います。
この素晴らしいお湯に寝起きから入れるなんて幸せ・・・。
新栄館の温泉は、時間短めで何度も繰り返し入って肌に吸い込ませるようにしました。
朝ごはんはこちら。
牛乳は、とーーっても濃い牛乳です。そこらに売っている普通のものではありません。
左に写っている茶碗蒸しは、大きな野菜がゴロゴロ入っているもので、野菜1つ1つがとてもおいしい。
晩御飯の時も感じましたが、ここはご飯(米)が旨い。
昨日、爺さんとの宴会で聞いた話で出ていましたが、
爺さんが作った「ゆめぴりか」だという話でした。
艶もあって味もとても良い米です。
爺さんは朝食の片づけをしてから外の除雪を始める。
トラクターの後ろにショベルを付けて、バックで除雪をしているようだ。
本当によく働きます。
昨夜、爺さんに、エビス買ってくるからね~~~と約束していたのでお出掛け。
せっかく道南に来たので、お昼ご飯はあのハンバーガー屋へ。
ハンバーガーも旨いのですが、オムライス・パスタも旨い。
たらふく食って、エビスビールを仕入れた後に、行ってみたい温泉があったので向かう。
やっているかわからないので電話を入れるが・・・出ない。
何度電話しても出ない。
本日休業と書かれている。
「五色ノ湯」という、源泉温度が非常に高い濃厚泉の旅館。
帰ってから爺さんに聞いたところ、
「もう年だからなぁ~・・・。でもな、温泉はうちの方がいいぞ!」とのこと。
五色ノ湯の女将さんはもう90歳を超えているので、今後も営業は難しいかもしれないらしい。
そして、爺さんは新栄館の泉質に誇りを持っている。泉質の良さの話がたくさん出る。
「飲んでよす(良し)。入ってよす(良し)。透明なのは濁川ではうちだけだ!」 と。
この言い方が全く嫌みに感じられない。爺さんの誇りであり、新栄館への愛が感じられます。
2泊目の晩御飯。
明日は「こくわ酒」出すぞ~~~
と、爺さんが言っていた。
中にコクワの実が入っている。
トロリとしたおいしいお酒だ。温泉女、これも絶賛。
この日も泊まりは自分達2人だけだったので、爺さんは専属で宴会に入ってくれた。
というか、食事を始める時にはもう、先に爺さんが発泡酒を持ち込んで座っていた。
この写真が2日目の晩御飯。もちろん、食事は他にもいろいろ出ました。
左から、
鶏鍋。濁川温泉郷の名物らしい。
ヤマメ(ヤマベ)の唐揚げ。爺さん、これ出すの忘れてて、酒取りに行った時に思い出したようで1時間以上経ってから持ってきた。あっても無くても全然いいんですよ~~。
いかめし。森町の名物ですね。
こんなのも爺さん持ってきました。
「今日、魚屋がきてなぁ~。置いてったのさぁ~。これ、息子には内緒なぁ~。」
イカの一夜干しは爺さんの傍に置いておいた。爺さん、一緒に食べようよ~~~~。
そして、これ飲もうよ~~~。
エビスを差し出すと、いいのに~と言いながら爺さん喜んで飲んでくれた。うれしいことです。
この日も爺さんが楽しい宴会を作ってくれました。
嫌みのない楽しい話ばかりで・・・たくさん話しました。
奥さんが病気になってから女遊びやめたこと。
畑を買収したこと(畑増やしたとか言わず“買収した!!”とか言うのが面白い)
温泉教授の松田先生のこと。
「あざらしさんの本にも御爺さんの写真出てましたよー。」って言うと、
爺さん : 「館浦あざらしか!!イケメンなんだよなぁ~~~。」とか言ってたり。
政治家は失言によって失敗する。天皇陛下を見習え!とか。
天皇陛下は「“こうしなさい”とか言わず、“つぼーすます”とだけ言う」 と・・・。
“つぼーすます” とは・・・・・・?
この言葉、何度も出てきて、途中からやっと意味がわかった。
「希望します」ということでした。
他にもわからない言葉はたくさんありましたが、それはそれで~ってことで。
まぁ、いろいろ楽しい話が続いてしばらく経ったところで温泉女が一言。
「あのぉ~・・・。ご飯・・・米・・・そろそろいいですか~?」 と。
爺さん、出すの忘れてて焦って取りに行ってた。
別に遅くなってもいいんですよ~~。
1階の食事の部屋に持ち込んだ酒が底をつき、追加で部屋に取りに行こうとしたところで階段の下に人影が・・・。
動かない・・・・。古い建物だから出るんだなぁ~・・・・・・・。
と、思ったら、女将さんがいました。こっちを見てる・・・。
「こんばんは~・・・」 と話しかけたとこころ、
女将 : 「胃が悪いんだからあんまり飲ませないでくださいね・・・。それと、もうそろそろいいんじゃないですかー??」
と、叱られてしまった。
「呼んできますか?」
「はい、お父さん呼んでください。」 と・・・。
爺さんを開放しなければ・・・。
せっかく出たので酒を1つだけ取って食事の部屋に戻り、
爺さんに「女将さんがそこで呼んでますよー」と伝えた。
爺さん : 「いいんだ。」
けーじ : 「でも、そこにいるよ~?」
爺さん : 「でな、獣取りにうちのネコがかかったことがあってな~」
爺さん : 「でもなぁ~ 温泉つけてやってたら治ってきてなぁ~」
・・・・・「おとうさーん!!!」 女将の声が聞こえる。
爺さん : 「ここの温泉はなぁ~~」
けーじ : 「ほら、呼んでるって!」
爺さん : 「いいの。俺がここのヌス(主)なの。」
爺さん : 「濁川で唯一の、のんでよす。入ってよすのなぁ~。透明なお湯でなぁ~。」
温泉女、ふすまを開ける。
女将、爺さんを呼ぶ。
爺さん、出ない。
しまいには爺さん、「寒いからそこ閉めてーん」 だってさ・・・。
じいさーん、それじゃヤバいよー。後で爺さんが叱られるよー・・・。
温泉女 : 「女将さん、トイレ行きたいってー。」
爺さん : 「トイレか!」
爺さん立ち上がる。
女将さん、病気で1人でトイレに行くのも困難なのでトイレには連れて行ってあげているらしい。
爺さん優しいよなぁ~。
でも、爺さん、出ていくときに一言、
「今来ます!」
今来ますって・・・・・おぃおぃ、大丈夫なのか・・・?
戻ってきて、さすがにヤバいと感じた自分たちは撤退モードに。
しゃべってばかりでけっこう食べ残してしまったが、ごちそうさまを言って今日の宴会は終了にした。
また夜は女湯でゆっくり貸切。
というか、2連泊で宿貸切。
この幸せな新栄館から明日は帰らなきゃいけないんだなぁ~と思いつつ就寝。
朝湯の後、8時から朝ごはん。
温かい温泉玉子が旨い。
ご飯がまたおいしく、御櫃の中身全部たいらげて、
名残惜しむかのように最後に男湯に浸かる。
けーじ : 「また来るぞ!」
温泉女 : 「うん!絶対来る!」
新栄館のお湯を肌に浸み込ませ、お湯から出て部屋の片付け。
昨日の夜、「肌にいいから温泉水持って帰りな」って爺さん言ってた。
一升瓶に入れていくといいよって言ってた。
荷物を車に積んで、会計に行ったら爺さんが一升瓶に満杯の温泉を汲んでくれていた。まだ温かい。
温泉女はそれを知らず、ペットボトルにお湯を汲みに行っていた。
温泉女が戻ってきたときには、爺さんはまた違う容器を持ってきてくれていた。
中身は温泉女が絶賛した内緒のお酒。こんなお土産もらうなんて・・・。
「母さん、デイサービスでいないから。今、俺しかいないから。」 って。
「また来てな。また来てな。」 昨日は笑顔だった爺さんが少し下向き加減で寂しそうに何度も言う。
爺さん・・・寂しい顔しないでくれよ・・・。昨日の夜は、あんなに楽しそうな満面の笑みだったじゃないか・・・。
寂しいのはこっちだよ・・・。
この寒い季節なのに爺さんが外まで見送りに出てくれた。
「いいんだよ、外まで出なくても~。爺さんも寒いんだから入って!!」 って言っても入らない。
お礼を言い、車を走らせ、手を振る。
爺さんはずーーっと手を振っている。そして、頭を深く下げている。
泣けてくるほどの爺さんのその姿。
そして、この寒さの中に軽装で佇んでいる爺さんが心配・・・。
アクセルを強く踏んでスピードを上げ、早く爺さんが中に戻れるようにするが
けっこう長い距離、真っ直ぐな道が続いている。
そして、車が見えなくなるまで爺さんが見送ってくれる。
うちの相方、温泉女は爺さんの見送ってくれている姿を最後まで見届け、そして見て泣きそうになっている・・・。
「いいんだよ!爺さん!見送らなくても!どうせまた“すぐ来るんだから”心配するなって!!」
と、心の中でつぶやいてみたのであった。
この爺さんのファンにならない人なんているのだろうか?
たった2泊で我々を虜にしてしまう、この人柄・人情・優しさ・包容力。
こんな人柄の爺さんのこと好きにならずにいられる人なんているのだろうか??
自分達は爺さんのことが本当に大好きなので、爺さん生きているうちに何度も行くことに決めています。
次は来月上旬に行く予定です。
個人的評価
★★★★
爺さんの人柄
★★★★★
濁川温泉郷 新栄館
北海道茅部郡森町字濁川49
01374-7-3007
日帰り入浴 400円
宿泊 1泊2食 6,500円~
2013.01.12~2013.01.14 連泊
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以前、日帰り入浴した記事はこちら
http://onsen.weblog.to/archives/1839107.html
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1月12日~1月14日まで2泊3日で連泊してきました。
以前、日帰り入浴した際に、ここの温泉の濃さに感動したのを思い出し、
今回は連泊でじっくりとここの温泉を味わおうということになりました。
3連休という繁忙期であり、冬の温泉シーズンのため予約が取れるかどうか心配しながら新栄館にTEL.....
おじいさん : 「あーい。もしもーーし」
けーじ : 「新栄館さんですか~?」
おじいさん : 「あーい、そうですーー」
けーじ : 「1月12日・13日の2連泊、2人1部屋なんですが空いてますか~?」
おじいさん : 「あーい、大丈夫ですーー」
けーじ : 「じゃあ予約お願いします」
おじいさん : 「名前と連絡先はー?」
名前・電話番号を告げる・・・。
おじいさん、奥の方に予約のことを伝える・・・。「予約、いいよな?」という声が・・・。
おいおい・・・もう予約大丈夫って言ってから、大丈夫かどうかそちらで相談かよ・・・。面白い爺さんだ・・・。
とかなんとか思いつつ、そして、かなりご年配なようなのでちゃんと予約できているかも心配しつつ濁川温泉郷へ向かった。
(途中、盤石温泉や桜野温泉熊嶺荘に寄り道しながら~)
到着して、新館の方に入ったところで御爺さん(宿主)と対面。
晩御飯の時間を決めてから部屋の鍵をもらい、2階の部屋へ。
建物は古いがきれいに清掃されている。
古いと言ってもこちらは新館・・・。
暖房・テレビもある。
携帯電話の電波も上々。
さて、早速お風呂へ。
新館には女湯。旧館には男湯がある。
旧館の男湯は混浴してもいいことになっている。
旧館の廊下を通り、
左右に傾きまくった階段を下りる。
この廊下、この階段がまた趣があって好きなところです。
なんとなく獣臭がするところは苦手だが・・・。まぁ、たいした気にならないので良しとしましょう。
脱衣場は衝立だけで仕切られた男女一緒の部屋。
後々、爺さん(宿主さんと呼ばず、どうしても良い意味で愛着があって爺さんと呼んでしまう・・・。)から聞いたのだが、混浴はいいが、脱衣場は男女完全に分けないとダメだって保健所が言いに来ているらしい。
「保健所がそんな決まり作る前からここやってるのに、どうしたらいいんだ!?」
と、爺さんが言い返すらしいが・・・。
爺さん、がんばれー!このままの新栄館が大好きだぞー!
と、応援したくなる。
久しぶりの新栄館。
相変わらずの名湯だ。
若干の油臭がこれまた良い。
濁川温泉で唯一の透明湯。
お湯は右奥の壁の穴から注がれて3つの湯船に分岐されている。
お湯の入る量によって温度調整ができるのと、
3つのうち2つの湯船には蛇口がついていて水を入れることができる。
この水も、もちろん水道水ではなく冷鉱泉。飲むとエグイ味がする。
お湯の方は若干塩味のある鉄分豊富な味わい。
昔の温泉分析表があるが、見てもよくわからない・・・。
危なっかしい天井も去年のまま・・・。
これでいいんです。これがいいんです。そのままがいいんです。
夕刻に着いたので、お風呂から出たらすぐご飯の時間になりました。
食事は新館1階の広間で。
他のお客さん、いっぱい来てるのかな~?と思いつつ襖を開けましたが・・・。
1組だけでした。
寂しいけど、ちょっと嬉しい・・・。
1泊6,500円という安値なので、食事の内容は期待していませんでしたが
おっ、なかなか良さそうです!
鍋・刺身・かき揚げ・オクラの胡麻和えなどなど多数。
この他にも出ました。
穴子と海苔の蕎麦とかも。覚えてないけど他にも出ました。
ビール等は注文することもできるが、持ち込みのお酒とかあるなら持ってきてここで飲んでもいいとのこと。うれしいことです。
食前酒は山葡萄の果実酒。
これ、旨いです。
爺さんが食事を運んできてくれている時に、
「山葡萄酒旨いですねー!」
というと、なんと13年物らしい。
他、出してはいけないだろうと思われるおいしい内緒のものもいただき、
またその時に爺さんと楽しい雑談が・・・。
爺さん、立ったまま話してるから、
「一緒に飲みながら話せば~?」と誘ってみた。
その結果・・・・・・・。
持ち込んだ日本酒、爺さんにおすそ分けして乾杯!
優しさと、とても良い人柄が笑顔に表現されていますね。本当に良い人です。
飲みながらたくさん話をしてくれました。
年は81歳と数ヶ月だということ。
昭和20年6月に海兵隊に応募して、綱1本で上まで登る試験ではこの管内1位で合格したということ。
12月から入隊予定だったのが8月で終戦してしまったこと。
爺さん : 「おい・・・終戦って、海兵隊入れないって・・・どうすりゃいいんだよ。。。」
と、自虐ネタ的な話まであって大笑いになったり。
函館の旅館で修行してきた息子が料理担当していること。
などなど。
爺さんは料理のことは一切わからないらしく、かき揚げは何をつけて食べるのか聞いたところ、
「知らん。そのままか?醤油か?知らん。」とのこと。
知らなくていいんです。その笑顔を見るだけでこちらも笑顔になるんです。本当に。
楽しく会話が弾み、1時間程度したところで、
爺さん、日本酒を飲みきる前に自分の席に缶ビール(発泡酒)を持ってきて飲もうとしていた。
そこで、爺さんの好きなお酒は何か聞いてみた。
爺さん : 「エビス飲むと、あいつを思い出すんだよなぁ~・・・」
と、あいつって誰のことか忘れましたが、とりあえずエビスが好きらしい。
ちょうど1本、エビスがあったので温泉女が部屋まで走り、持ってきた。
その結果・・・。
イェ~イ!!
爺さん、ご機嫌です。
本当に嫌みのない微笑ましい笑顔。
エビスで機嫌が取れたからか、爺さんのサービス精神なのかは不明ですが、
次はまた違うお酒が出てきました。
とにかく飲めと。一気に飲めと。匂いなんて嗅ぐなと言う。
一気に飲んで、他の酒で味を流せという。
怪しい・・・爺さん、怪しいぞ~~?
きっと、あの酒だな・・・・・。
とりあえず言われた通に一気飲みする。
温泉女はあまりのキツさに山葡萄酒で口直しをする。
飲んだ我々を見て爺さん、またニッコリ。
マムシ酒だよー と。
やっぱり・・・。ちょっと辛い感じでしたが全く問題なし。おいしくいただきました~。
「これ飲むと、あれがこうなるんですよねぇ~?」と、下の方に手を持っていき、腕を上向きにすると
爺さんは口を全開にして大笑い。
自分たちもそれにつられて大笑い・・・。楽しいひと時でした。
さらに会話は弾み、1時間半を過ぎ去った頃、爺さんは女将さんに呼ばれてしまって残念ながら宴会は終了になってしまいました・・・。
他に泊まりのお客さんいないから、新館の女湯も自由に一緒に入っていいんだよーと言ってくれたので、
夜はそちらで混浴をしました。
(温泉の画像は前回記事参照)
新館がある場所は、以前は「仙人の湯」という露天風呂があったそうで、旧館とは別源泉が引かれている。
こちらは鉄っぽい湯の華がたくさんお湯の中に舞っているお湯。
盤石温泉と似たような色合いに見えるが、それとも違う感触です。
旧館の男湯の方が風情があって好きですが、女湯の方も素晴らしい湯質だと思います。
旅の疲れもあってかその日は早めに寝付いてしまい、そのまま朝を迎えました。
朝風呂もいいですなぁ~。
新栄館のお湯、最高です。
あまりにも濃くて長湯しすぎちゃヤバいのではないかと思うくらいのお湯。
道内有数の名湯じゃないかと思います。
この素晴らしいお湯に寝起きから入れるなんて幸せ・・・。
新栄館の温泉は、時間短めで何度も繰り返し入って肌に吸い込ませるようにしました。
朝ごはんはこちら。
牛乳は、とーーっても濃い牛乳です。そこらに売っている普通のものではありません。
左に写っている茶碗蒸しは、大きな野菜がゴロゴロ入っているもので、野菜1つ1つがとてもおいしい。
晩御飯の時も感じましたが、ここはご飯(米)が旨い。
昨日、爺さんとの宴会で聞いた話で出ていましたが、
爺さんが作った「ゆめぴりか」だという話でした。
艶もあって味もとても良い米です。
爺さんは朝食の片づけをしてから外の除雪を始める。
トラクターの後ろにショベルを付けて、バックで除雪をしているようだ。
本当によく働きます。
昨夜、爺さんに、エビス買ってくるからね~~~と約束していたのでお出掛け。
せっかく道南に来たので、お昼ご飯はあのハンバーガー屋へ。
ハンバーガーも旨いのですが、オムライス・パスタも旨い。
たらふく食って、エビスビールを仕入れた後に、行ってみたい温泉があったので向かう。
やっているかわからないので電話を入れるが・・・出ない。
何度電話しても出ない。
本日休業と書かれている。
「五色ノ湯」という、源泉温度が非常に高い濃厚泉の旅館。
帰ってから爺さんに聞いたところ、
「もう年だからなぁ~・・・。でもな、温泉はうちの方がいいぞ!」とのこと。
五色ノ湯の女将さんはもう90歳を超えているので、今後も営業は難しいかもしれないらしい。
そして、爺さんは新栄館の泉質に誇りを持っている。泉質の良さの話がたくさん出る。
「飲んでよす(良し)。入ってよす(良し)。透明なのは濁川ではうちだけだ!」 と。
この言い方が全く嫌みに感じられない。爺さんの誇りであり、新栄館への愛が感じられます。
2泊目の晩御飯。
明日は「こくわ酒」出すぞ~~~
と、爺さんが言っていた。
中にコクワの実が入っている。
トロリとしたおいしいお酒だ。温泉女、これも絶賛。
この日も泊まりは自分達2人だけだったので、爺さんは専属で宴会に入ってくれた。
というか、食事を始める時にはもう、先に爺さんが発泡酒を持ち込んで座っていた。
この写真が2日目の晩御飯。もちろん、食事は他にもいろいろ出ました。
左から、
鶏鍋。濁川温泉郷の名物らしい。
ヤマメ(ヤマベ)の唐揚げ。爺さん、これ出すの忘れてて、酒取りに行った時に思い出したようで1時間以上経ってから持ってきた。あっても無くても全然いいんですよ~~。
いかめし。森町の名物ですね。
こんなのも爺さん持ってきました。
「今日、魚屋がきてなぁ~。置いてったのさぁ~。これ、息子には内緒なぁ~。」
イカの一夜干しは爺さんの傍に置いておいた。爺さん、一緒に食べようよ~~~~。
そして、これ飲もうよ~~~。
エビスを差し出すと、いいのに~と言いながら爺さん喜んで飲んでくれた。うれしいことです。
この日も爺さんが楽しい宴会を作ってくれました。
嫌みのない楽しい話ばかりで・・・たくさん話しました。
奥さんが病気になってから女遊びやめたこと。
畑を買収したこと(畑増やしたとか言わず“買収した!!”とか言うのが面白い)
温泉教授の松田先生のこと。
「あざらしさんの本にも御爺さんの写真出てましたよー。」って言うと、
爺さん : 「館浦あざらしか!!イケメンなんだよなぁ~~~。」とか言ってたり。
政治家は失言によって失敗する。天皇陛下を見習え!とか。
天皇陛下は「“こうしなさい”とか言わず、“つぼーすます”とだけ言う」 と・・・。
“つぼーすます” とは・・・・・・?
この言葉、何度も出てきて、途中からやっと意味がわかった。
「希望します」ということでした。
他にもわからない言葉はたくさんありましたが、それはそれで~ってことで。
まぁ、いろいろ楽しい話が続いてしばらく経ったところで温泉女が一言。
「あのぉ~・・・。ご飯・・・米・・・そろそろいいですか~?」 と。
爺さん、出すの忘れてて焦って取りに行ってた。
別に遅くなってもいいんですよ~~。
1階の食事の部屋に持ち込んだ酒が底をつき、追加で部屋に取りに行こうとしたところで階段の下に人影が・・・。
動かない・・・・。古い建物だから出るんだなぁ~・・・・・・・。
と、思ったら、女将さんがいました。こっちを見てる・・・。
「こんばんは~・・・」 と話しかけたとこころ、
女将 : 「胃が悪いんだからあんまり飲ませないでくださいね・・・。それと、もうそろそろいいんじゃないですかー??」
と、叱られてしまった。
「呼んできますか?」
「はい、お父さん呼んでください。」 と・・・。
爺さんを開放しなければ・・・。
せっかく出たので酒を1つだけ取って食事の部屋に戻り、
爺さんに「女将さんがそこで呼んでますよー」と伝えた。
爺さん : 「いいんだ。」
けーじ : 「でも、そこにいるよ~?」
爺さん : 「でな、獣取りにうちのネコがかかったことがあってな~」
爺さん : 「でもなぁ~ 温泉つけてやってたら治ってきてなぁ~」
・・・・・「おとうさーん!!!」 女将の声が聞こえる。
爺さん : 「ここの温泉はなぁ~~」
けーじ : 「ほら、呼んでるって!」
爺さん : 「いいの。俺がここのヌス(主)なの。」
爺さん : 「濁川で唯一の、のんでよす。入ってよすのなぁ~。透明なお湯でなぁ~。」
温泉女、ふすまを開ける。
女将、爺さんを呼ぶ。
爺さん、出ない。
しまいには爺さん、「寒いからそこ閉めてーん」 だってさ・・・。
じいさーん、それじゃヤバいよー。後で爺さんが叱られるよー・・・。
温泉女 : 「女将さん、トイレ行きたいってー。」
爺さん : 「トイレか!」
爺さん立ち上がる。
女将さん、病気で1人でトイレに行くのも困難なのでトイレには連れて行ってあげているらしい。
爺さん優しいよなぁ~。
でも、爺さん、出ていくときに一言、
「今来ます!」
今来ますって・・・・・おぃおぃ、大丈夫なのか・・・?
戻ってきて、さすがにヤバいと感じた自分たちは撤退モードに。
しゃべってばかりでけっこう食べ残してしまったが、ごちそうさまを言って今日の宴会は終了にした。
また夜は女湯でゆっくり貸切。
というか、2連泊で宿貸切。
この幸せな新栄館から明日は帰らなきゃいけないんだなぁ~と思いつつ就寝。
朝湯の後、8時から朝ごはん。
温かい温泉玉子が旨い。
ご飯がまたおいしく、御櫃の中身全部たいらげて、
名残惜しむかのように最後に男湯に浸かる。
けーじ : 「また来るぞ!」
温泉女 : 「うん!絶対来る!」
新栄館のお湯を肌に浸み込ませ、お湯から出て部屋の片付け。
昨日の夜、「肌にいいから温泉水持って帰りな」って爺さん言ってた。
一升瓶に入れていくといいよって言ってた。
荷物を車に積んで、会計に行ったら爺さんが一升瓶に満杯の温泉を汲んでくれていた。まだ温かい。
温泉女はそれを知らず、ペットボトルにお湯を汲みに行っていた。
温泉女が戻ってきたときには、爺さんはまた違う容器を持ってきてくれていた。
中身は温泉女が絶賛した内緒のお酒。こんなお土産もらうなんて・・・。
「母さん、デイサービスでいないから。今、俺しかいないから。」 って。
「また来てな。また来てな。」 昨日は笑顔だった爺さんが少し下向き加減で寂しそうに何度も言う。
爺さん・・・寂しい顔しないでくれよ・・・。昨日の夜は、あんなに楽しそうな満面の笑みだったじゃないか・・・。
寂しいのはこっちだよ・・・。
この寒い季節なのに爺さんが外まで見送りに出てくれた。
「いいんだよ、外まで出なくても~。爺さんも寒いんだから入って!!」 って言っても入らない。
お礼を言い、車を走らせ、手を振る。
爺さんはずーーっと手を振っている。そして、頭を深く下げている。
泣けてくるほどの爺さんのその姿。
そして、この寒さの中に軽装で佇んでいる爺さんが心配・・・。
アクセルを強く踏んでスピードを上げ、早く爺さんが中に戻れるようにするが
けっこう長い距離、真っ直ぐな道が続いている。
そして、車が見えなくなるまで爺さんが見送ってくれる。
うちの相方、温泉女は爺さんの見送ってくれている姿を最後まで見届け、そして見て泣きそうになっている・・・。
「いいんだよ!爺さん!見送らなくても!どうせまた“すぐ来るんだから”心配するなって!!」
と、心の中でつぶやいてみたのであった。
この爺さんのファンにならない人なんているのだろうか?
たった2泊で我々を虜にしてしまう、この人柄・人情・優しさ・包容力。
こんな人柄の爺さんのこと好きにならずにいられる人なんているのだろうか??
自分達は爺さんのことが本当に大好きなので、爺さん生きているうちに何度も行くことに決めています。
次は来月上旬に行く予定です。
個人的評価
★★★★
爺さんの人柄
★★★★★
濁川温泉郷 新栄館
北海道茅部郡森町字濁川49
01374-7-3007
日帰り入浴 400円
宿泊 1泊2食 6,500円~